最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 「ホーテンダリアの眠る夜」シリーズは、ひとまずこれでお終いになります。
 以下、色々と作品について語っていますので、そういったものが苦手でない方はお付き合いください。

 まず何よりも思うことは、ちゃんと書きたいところまで書ききれた! ということです。
 「ホーテンダリア」を始めたのは随分昔のことなのですが、量の割にはずるずると時間をかけて書いてしまいました。書きたいものがはっきりしすぎていたせいか、いざ文章にしようとすると異様に時間がかかってしまって。エンディングもきっちり決めていたものの、そこへ辿り着くまでに本気で挫折しかけました。短編連作なので、どこで終わりにしてもそれほど違和感ないだろう……なんていう誘惑に駆られたりして(笑)。それでもどうにかここまで漕ぎつけることができたのは、やはり読んでくださった方々のおかげです。ありがとうございました。

 他の作品ももちろんそうなんですが、こと「ホーテンダリア」に関しては、自分の趣味が完全に前面に出てきています。
 近代ヨーロッパが舞台の、ちょっとミステリアスなファンタジー。ホラーとまではいかないけれど、どこか暗くて陰気な雰囲気。ストーリーに関しては、いつかどこかで聞いたことがあるような、なんとなく懐かしい説話的なもの。……そういうのがとても好きで、でもあまり見かけなくて。「それなら自分で書いてみよう!」と思い立ったのが始まりでした。
 それぞれの話を書くときに意識していたのは、ヒネリはなくてもきちんとまとまっていること。各章が短いので、どんでん返しの一つや二つないとつまらないかな〜と思いつつも、その辺うまくやる力量がなかったので諦めました(笑)。それで結局きちんとまとまったのかと言いますと、それはそれで反省点がたくさん……(がくり)。

 登場人物達の性格や関係も、やはり個人的な趣味が炸裂しています。
 リアンのさばさばした性格は書いていて楽しかったです。でも気がつくと冷徹ぶりが洒落にならなくなっていたりして大変でした。セシルはかなり気をつけて書いていたキャラ。いい人だけど善人になりすぎず、苦労人だけどヘタレになりすぎず……という無茶な目標を設定していました。ゾメニパリオンについては、ほんっと全然何も考えていませんでした。そもそもレギュラーになる予定すらなかったので。色々細かく決めて書いていた「ホーテンダリア」の中では大きな誤算キャラだなあ。
 リアンとセシルの微妙な関係も、微妙になるよう意識して頑張りました。この微妙な距離感が私的には好みです(笑)。『眠る夜』でセシル視点で書いてると、結構本気でリアンが好きなんじゃないかっていう感じもありますが、多分仲間としての信頼感の方が大きいのではないかと。ただ、この辺りは自分で書いていても分からなくなってしまいました。
 
 今後機会があれば、リアンとセシルの出会いの話や、「もの」の絡まないかつての日常の話なんかの番外編も書きたいと思っています。「ホーテンダリア」は第一章から最終章の間の時間で色々なことが起こっていると思うので、掘り起こして考えるのも楽しそう。このお話を読んでくださった皆様も、「ホーテンダリア」の世界をご自身の中で広げながら楽しんでいただけたら幸せです。

 2008.6.14 アスカ