魔女はいわゆる魔女だった。
黒いローブに身を包み、「イッヒッヒッヒ」と釜の中身をかき混ぜる、 そんないわゆる魔女だった。
顔には深く刻まれた皺。婆（ばあ）の婆のそのまた婆と、そう評したくなる老体。
その魔女の元へ、領主の三男坊がお供も連れずやって来た。
はてさて、麗しの若君の“やんごとなき”相談事とは…。
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どこまでもかみ合わない二人の、ファンタジック・コメディ。短編連作。

■魔女■
この物語の主人公。泣く子を更に泣かせる強面の老婆。
浮世を離れ、森のはずれの洞窟にて一人（＋一羽）きりで引きこもり生活を送っていたが、
オーレリーの来訪によりその日常が一変することとなる。
なんだかんだで面倒見が良く、非情になりきれないお人好しなところも。

■オーレリー■
地方一帯を治める領主の三男坊。
誰もが見惚れるほどの美貌を誇るが、代わりに頭の中身は大変残念なことになっている。
思いこんだら一直線でとことんしつこい。その無駄な根性で魔女につきまとい始める。

■ユーベル■
オーレリーの兄であり、領主の次男。
オーレリーとは打って変わって冷静沈着で隙がなく、どこか取っつきにくい雰囲気。
弟の将来を懸念し、魔女に強い警戒心を抱く。魔女を領内から追い出したいようだ。

■ベリアメル■
魔女の師匠に当たる人物で、実は……。
自由気まま、神出鬼没。幾度となくその姿を変えては人々を誑かし、仮初の日々を楽しんでいる。